40代以上でも、もちろん、矯正治療は可能です。しかし、この年齢になってまいりますと、どんな健康な人であっても、だんだんと、正常な状態からはずれて、何らかの身体的なダメージが生まれてくるものです。
それだからこそ、口元の健康を考え、矯正を行う方も多くおられます。
こういった方々の矯正の場合に、心がけるべき大切なことは、それぞれの患者様が、どの程度の身体的ダメージを、すでに持っているのかを見極めることです。年齢を重ねると言うことは、歯茎も弱くなりますし、骨そのものももろくなってきます。従って、若い年齢の方々と同じような力を、矯正装置によって歯に与えることで、よりダメージを広げることにもなりかねません。
そこで見極めが大切になってくるわけですが、その結果として、患者様が矯正に置いて希望するレベルと、歯科医師の考える目標値との間に、ずれが生じる時が、往々にしてあります。
矯正治療を20年続けることによって、人間の生体反応を理解できるようになったと、すでに書いておりますが、生体反応を超えて無理に治療することは、決して望ましいことではありません。従って患者様の希望する目標と、実際のダメージを受けてしまっている生体から判断される目標値とのずれを、誘導して、適切な矯正を実施することは歯科医師の大切な仕事であり、それをできると言うことが、経験であると思います。
また、この年代の方々は、矯正治療だけでなく、補綴、外科、歯周治療、咬合治療など、状態によって、治療が必要になる場合が多いです。
こういった状況を無視した無理な矯正治療は、患者様を、不幸にすることではないかと考えます。